手掌多汗症

手掌多汗症とは

手掌多汗症とは手掌多汗症とは、手掌の発汗が過剰になった状態です。
周囲温度が高い時や極度の緊張下で手に汗をかくことがありますが、手掌多汗症では、涼しい場所にいたり緊張していなかったりしても、手の発汗量が増えます。発汗量も人それぞれで、少し湿る程度から汗が滴となって周囲に落ちるほど多量になる人もいます。
手掌多汗症では、手の汗腺は正常です。多汗の原因として、手をつかさどる交感神経の亢進が関与していると考えられています。通常は、周囲温度が高い時や緊張下に置かれた時に手の汗腺に作用する物質が交感神経から放出されて発汗しますが、手掌多汗症ではこの交感神経が常に働いてしまうため、多量の発汗に繋がってしまいます。

二次性の多汗症とは

副腎機能亢進症(クッシング症候群、褐色細胞腫)や甲状腺機能亢進症などの疾患、あるいは肥満が原因で、発汗量が増えます。
手掌だけでなく、全身の発汗量が増えるのが特徴です。

手掌多汗症の特徴

手掌多汗症の家族歴が多い家系も存在するものの、家族の中で特定の人だけが手の発汗量が多いという場合もあります。多くの場合は10歳頃までに他人と比べて手の発汗量が多いことを自覚しますが、ストレス下に置かれるなどの要因が引き金になり、成人後に症状が出る人もいます。
手掌多汗症には人種差が認められ、黄色人種が比較的多いとされています。日本人の手掌多汗症の有病率は約5%です。つまり、単純計算で20人に平均1人が手掌多汗症ですが、隠して誰にも言わない人もいると考えられます。
また、発汗部位は人によって異なり、手掌だけの場合もあれば脇の下や足底の発汗が多い場合もあります。

手掌多汗症の症状例

通常、手掌多汗症を放置してもあまり健康被害は生じませんが、日常生活の中で不都合が生じることがあります。
日本人の約5%が手掌多汗症だとされており、珍しいことではありません。

  • ハンカチを手に持ち続けていないと不安
  • 文字を書こうとすると紙が濡れるため、紙から手を浮かせる必要がある
  • パソコンのキーボードやピアノの鍵盤が濡れてしまうため不快
  • 他人と握手をしたり、手を繋いだりすることに抵抗がある

医師の間でも手掌多汗症はあまり理解されておらず、医療機関を受診しても精神的なものだと決めつけられて安定剤を処方される、若いことを理由に年齢が上がれば治ると判断されるなど、適切な治療や診断を受けられない場合もあります。
同じ症状に悩む家族がいれば比較的耳を傾けてもらいやすいですが、そうでないと、「誰でも汗は出る」「気にしすぎ」などと言われて周囲の人々に理解してもらえず、一人で悩む方もいらっしゃいます。

手汗を止める方法
(手掌多汗症の治療)

選択的ETS
(胸部交感神経切除術)

選択的ETS

全身麻酔が必要な日帰り手術です。ETSの適応は、手掌と腋窩の多汗症です。
特殊な気管チューブを使用して片方の肺を虚脱させた後、脇の下と胸部を切開して3mmの胸腔鏡を挿入し、目的とする胸部交感神経にアプローチします。3mm程の小さな切開で術後の傷痕も目立ちません。
当院では代償性発汗を可能な限り少なくするために、交通枝のみを切除する「選択的」ETSを行っています。
交通枝のみを選んで切るという意味です。

特徴

  • 全身麻酔で約1時間、眠っている間に終了する
  • 日帰りで手術が可能
  • 効果は永続的

選択的ETS

抗コリン外用薬

アポハイドアポハイド交感神経から放出されるアセチルコリンという物質の伝達を阻害する外用薬として、アポハイドローションを使用します。

塩化アルミニウム外用・イオントフォレーシス

塩化アルミニウム外用・イオントフォレーシス汗を出す管に局所的に作用して管を閉塞させ、発汗量を抑えます。
治療効果が持続しないため、効果を維持するには治療の継続が必要です。
低リスクではありますが、リターンも少ない方法です。

プロバンサイン内服

プロバンサイン内服どの部位の多汗症にも使えるのが、プロバンサインという抗コリン薬を服用する方法です。
便秘や口渇などの副作用が出る場合がありますが、夏期のみ服用する人もいます。

  治療頻度
効果時間
費用 副作用・問題点
選択的ETS 永久 約8万円
(片側・日帰り全身麻酔)
代償性発汗(切除方法に工夫が必要)
アポハイドローション 毎日 710円
(1本で約1週間)
手汗用新薬
作用機序はエクロックゲルやラピフォートワイプと同じ
イオントフォレーシス 週1~2回 880円
(1回につき)
頻回の通院が必要、効果にムラがある
塩化アルミニウム外用 毎日 1,300円
(100mlあたり)
接触性皮膚炎
プロバンサイン内服 毎日 830円
(1ヶ月・1日3回内服)
口渇・便秘

通常の保険診療になります。初診料・再診料がかかります。